達磨の目入れ祈願と共に振り返る
オフィス移転からの1年とこれからのこと

2018年1月、じげんは虎ノ門の新オフィスに移転してから1周年を迎えました。その節目の企画として、CLO(Chief Lifestyle Officer)としてオフィス移転プロジェクトの企画・デザイン監修・コンセプターを務めていただいた水嶋ヒロ氏とじげん代表の平尾丈が、初めてオフィスをめぐりながら対談を行いました。
2016年5月のCLO就任まで、水嶋ヒロ氏とじげん代表の平尾丈の2人が歩んできた道はまったく異なります。しかし、主体的にキャリア選択を行う意思決定、家族の在り方の変化をきっかけとした仕事への取り組み、チームワークについての考え方など、対談を通じて浮かび上がった共通点は少なくありません。

当日は「和」を1つのテーマに、こだわりの行き届いた新オフィスに合わせて、2人ともに和装。新年ということで、達磨の目入れ祈願を執り行った後、オフィス移転プロジェクトを通じてお互いにどんな変化があったのか、「経営者」としてそれぞれどう会社と向き合っているのか、2018年、仕事やプライベートで大事にしていきたいことなど、じっくり語っていただきました。

CLO水嶋ヒロ氏×代表取締役社長平尾丈の特別対談

食事後の帰りのタクシーの中で泣きそうになることも(水嶋)

じげん代表取締役社長 平尾丈 [以下、平尾] )お久しぶりです。

じげんChief Lifestyle Officer 水嶋ヒロ氏 [以下、水嶋] )定期的にお食事をご一緒する機会はいただいてますが、こういった対談は初めてですね。

平尾)そうですね、改めてこうやって、しかも呉服を着て話すのは、新鮮な気持ちになりますね。

水嶋)とてもよくお似合いです!おたがいに呉服を着てこうして改めて完成したオフィスを巡ってみると、これまでのことを思い出します。

-お二人はプライベートでも交流があるのですね。お互いの印象から教えてください。

水嶋)心から尊敬している先輩です。何度もご一緒させていただいている食事の場は僕にとって学びの場でもあり、経営に携わる身として尽きない様々な悩みの相談に乗ってくださいます。個人的な話ですが、僕はどうすれば人が輝くかを考えたり、その人の良い部分を見つけるのが実は得意で、そこを強みに仕事をしていたりもするんですが、逆に自分のことを客観的に分析することが苦手で…。なので、僕の多くを本当に親身になって理解してくださっている平尾さんからのアドバイスは無茶苦茶胸に刺さるんです。自分にとって活動の指針にもなっています。

平尾)本当ですか、なんだか気恥ずかしいですね。

水嶋)たまに胸に刺さりすぎて、帰りのタクシーで泣きそうになることもあるのですが‥(笑)。

平尾)やめてください、ファンの方に僕が怒られちゃいますよ(笑)。でもお世辞でも何でもなく水嶋さんは頭の回転も速く、独自の感性を持つ異能な方という点でもリスペクトしているのですが、何より型にはまらないストイックな姿勢が格好いいと思っていて。家族のことを大切にされて、常識にとらわれない意思決定をして、きちんとそれを体現されている。これはなかなかできないことだと思うんです。年齢は少し僕が上ですが、水嶋さんのことは人として尊敬しています」

-水嶋さんが1984年生まれの33歳、平尾社長が1982年生まれの35歳とほぼ同世代ですね。

平尾)これまで、私と水嶋さんが登ってきた山は違います。でも本質的なところで見習うところは多く、また同世代として価値観を共有できるところもあり、それも含めて水嶋さんの人となりが好きというか。

水嶋)そう言っていただけて、本当に嬉しいです。僕は平尾さんを人としてはもちろん、事業家としても大尊敬しています。知れば知るほど、圧倒的に傑出した頭脳をお持ちのすごい方です。勝手を許していただけるならば、いつか丸一日平尾さんを独り占めにしてとことん学ばせていただきたい(笑)。

-じげんCLO就任をきっかけにお二人の関係が始まって、オフィス移転プロジェクトは初めての本格的な共同作業でした。振り返っていかがでしたか?

平尾)いやー怒涛の日々でしたね(笑)。

水嶋)色々ありましたね(笑)。

平尾)水嶋さんには、日本のベンチャー企業として世界に向けて「じげん」を発信していきたいという思いやじげんで働く社員が成果を出すことに邁進できる居心地の良い共創の場を創りたいという思いなど、欲張りな私の様々な要望をきちんと汲み取っていただけたことに感謝しています。単なる「和」ではなく、ゆかりのあるスイスのモダン建築の要素も組み込んでいただいたことが、じげんとしてのオリジナリティを生み出すのに大きく寄与していると思います。武田双雲さんの「事業家集団」の書は外部発信だけでなく弊社のメンバーはそれを見て初心に帰ることができたり、エントランスはプロデュースしていただいた香りでお越しいただいた方をおもてなしする仕掛けがあったりと、デザイン重視のインパクトだけではなく、ソフトな部分まで行き届いているというか。オフィスがプラットフォームとして機能するように、今後の企業としての成長というところまで見据えて監修していただいたんだなと改めて感じます。

水嶋)そう言っていただけて光栄です。実は当初進むごとに不安要素が次々と立ちはだかり、建物の骨組みを一切変えられないことを初め、構造的な制約と、皆さんの想いや願いと構想をどう折り合いつけていくか、少し苦慮した部分もありました。実は僕が空間を考える上で大事にしていたことがありまして‥。たまにニュージーランドに行って、だだっ広くて何もない草原に身を置いたりするのですが、そこにいると自然と気持ちが落ち着いてきて、空高くから豆粒になった自分を俯瞰で見つめることができるような感覚になり、不思議とアイデアやパワーが溢れてくることがあるんですけど‥。

平尾)ああ、なるべく余白が多いほうがアイデアの源泉が湧いてくる感じですね。

水嶋)はい、その通りです! この感覚を東京の虎ノ門という環境で少しでも創出するにはどうすればいいか。なるべくノイズの少ない環境に身を置くほうが働く人にとっても気持ちがいいはずだし、見えない部分で仕事にプラスを生むのではと思いました。じげんで働く皆様は一日の大半の時間をここで過ごすと伺ったので、空間の余白や抜け感を大切にすることでストレスを遠ざけ、アイデアの源泉を刺激し、心が豊かになり、ひいてはライフスタイルの充実につなげていくことができるんじゃないかと。

-以前のオフィスとは大きく雰囲気が変わりました。職場環境がこれだけ変化すると、経営者として戸惑いもあったのでは?

平尾)むしろそこは期待していたというか。革新が求められるベンチャー企業のオフィス移転の意味づけとして、「どういった風に変わるのか」という姿勢も問われると思うんです。フィールドも価値観も異なる「異能」の人たちが、それぞれ力を発揮して活き活きと働ける環境を重視している弊社としては、意匠面も含めてこれまでの自分にはない才能に対し、素直にリスペクトすることが大切じゃないかと。むしろ今回は水嶋さんのプロデュースによって、じげんのオフィス文化に新しい刺激を与えて、どう化学反応を起こすかが楽しみでした。

水嶋)恐れ多いです。僕にとってじげんさんの中枢をブランディングできるお仕事に携われたことは本当にいい経験になりました。じげんのCLOである自分は、そうでなかった自分と比べて社会的な信用が全然違います。お声がけいただいたときはビジネス寄りの活動に力を入れていきたいと考えていたタイミングだったので、本当に有難かったご縁です。

そろそろ次のステージに向けて自社プロジェクトを発信していく時期だと思っています(水嶋)

-CLO就任やオフィス移転プロジェクト監修を経て、水嶋さんの活動の方でポジティブな変化はありましたか?

水嶋)はい。実際にCLO就任後、『じげんのCLOなんだ!』という反応をいただけます。その信頼を前提としたお仕事の話をいただくこともありました。さらにオフィス移転プロジェクトの企画・デザイン監修・コンセプターを務めさせていただいたことで、自分の事業展開を進めるうえでお見せすることができる実績のポートフォリオが増えたことは大きかったですね。

平尾)こちらはお願いしている立場ですが、そういうお話は嬉しいですね。ひとつ伺いたいのですが、経営者として、事業の取り組みで大切にされていることはなんですか?

水嶋)それは至ってシンプルで、弊社の取り組みが誰かのライフスタイルに何かしら好影響を与えられる可能性があるかを真摯に考えるということですね。ご縁を大切に、好きな人と本気でやりたいと思えることでしか仕事をしない誠に勝手なスタンスではありますが、そのプロセスもアウトプットでも人の楽しみや喜びに繋げられるイメージができないと、いくら魅力的な側面があってもやれません。この会社(株式会社3rd i connections)は4月で3期目になりますが、今後はもっと人との関わりを充実させていきたい思いがあり、人員体制の強化など、チーム力を高めていきたいと考えているところです。

平尾)質の高いチーム力があって、初めてできることもありますもんね。

水嶋)本当におっしゃる通りで、これまではプロジェクト単位で他社さんと取り組むケースが多かったのですが、そろそろ次のステージとして自社プロジェクトを実現して、より3rdiCの色が濃いものを世に送り出していく段階なのかなと考えています。そのためには、信頼できて共に邁進していける仲間の力が必要だと思うんですが、そこはちょっと平尾さんにも伺いたいと思っていまして……。

平尾)私も本当に人がすべてだと思います。ただそういった仲間を探すときに、自分と同じ価値観やスキルを持つ人を選ぶと組織の拡張性も生まれにくい。一方で多様性だけを優先して自分にはない才能を持つ人を選ぶと、ときに意思疎通がうまく取れず、余計なコミュニケーションコストがかかる可能性もある、という天秤にかけたときの難しさありますよ。

水嶋)なるほど、そうですよね…。うちは0から1を生むことに関係する仕事が多いので、できれば僕は100%生み出す作業に集中したいという思いがあります。なので自分の考えや行動を、そのベースとなる背景まで分かってくれる人と一緒に仕事したい。ただ、それがきちんとロジカルに言語化してくれる人なのか、あるいは自分と同じく右脳をこすり合わせながらビジョンを共有できる人なのか、どちらが良いかは正直考えあぐねています。やっぱり前者な気はしていますが…。

平尾)そういった信頼関係構築に向けた模索は、自分にとっても永遠のテーマですね。企業のフェーズによっても変わるかもしれません。

水嶋)いずれにせよ、最後は人と人とのつながりが、仕事はもちろん、人生の豊かさまでも左右すると思っています。僕の場合、いま行っていることは全て最大の目的である自分らしく生きることを突き詰めるためです。ただそれは自己完結する断絶された世界ではなくて、家族や一緒に仕事をする仲間、アウトプットするものを受け取っていただけた全ての方々にも還元できることがあると信じてです。これからもじげんさんをはじめ、本当に信頼できる関係を大切に、他とは少し違う取り組みを築き上げていきたいと思っています。

20代と30代、それぞれに変わる価値観や物事の捉え方とは

-周囲の方々や社会とどういったかたちで関係構築するかは、自分自身のライフステージや環境の変化によって異なる部分もあるかと思います。お二人とも年齢を重ねるにつれ、価値観や考え方の変化はありましたか?

平尾)そうですね。20代の頃とは、価値観や物事の捉え方が変わっているところはありますね。

水嶋)僕の場合は24歳のときに結婚したのですが、そこから娘が生まれ、妻を大切に思う気持ちに加え「娘のために何を残せるか」といったことや、「自分は父としてどういう存在であるべきか」といったことを真ん中に置いて考えることが多くなりました。僕にとって「自分らしく生きること」は、家族のために最大限できることをすることであって僕自身のステータスを上げることを目的とするマインドはありません。なので、自ら経営をすることで、自分のスケジュールも管理でき、将来に必要な学びを蓄えていく機会を積極的に選んでいます。

平尾)素晴らしいですね。

水嶋)娘には社会の仕組みについてもきちんと伝えていく責任があるので、当然いろんなことを幅広く理解しないといけない。企業は営利活動だけでなくESG※の取り組みも重視されて、職業の在り方についてはYouTuberが「なりたい職業」として憧れの存在になっている。こういった価値観やパラダイムの変化についても自分なりの考えを持ち、家族という一番身近で一番大切な観点から、社会のことを考えるようになったと思います。

※ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が近年急速に広まっています。

平尾)私も年齢とともに、社会貢献や次世代に何を残せるかということについて、より深く考えるようになりました。私は23歳のときに父の死を経験して死生観について改めて見つめ直し、自分に残された時間は限られている、だから後悔のないように弊社の経営に集中しようと決断する価値観の転換点がありました。それからは「じげんの経営者」であるということに一番の優先順位を置いて、事業成長のために必死で駆け抜けてきました。今や35歳、10代から気付けば半生を経営者として過ごしてきたことになります。そんな中で、会社の成長とともに、20代の頃より幅広い多様性を受け入れる思考が根付いてきたようにも思います。個人としても会社としても、社会に対してどう貢献できるか。息抜きのはずの正月も、そんなことをずっと考えていました。

水嶋)一方で社会貢献はどういった背景や理念があったうえでアクションを取っているのか、厳しく問われる時代になっていると思います。

平尾)どう見られるかバランスを取るのは、難しいところはあるでしょうね。

水嶋)そういった意味で以前から「生活機会の最大化」を基本理念とされているじげんさんが何か社会的意義を見据えた事業展開を行うことは腑に落ちるというか、僕としても、ぜひお役に立てるところがあればご協力したいと思っています。

2018年は0から1に育った芽を
さらに大きく成長させる(水嶋)

-今日は達磨に目を入れていただきましたが、どんな思いを込めたのか、2017年の振り返りを踏まえて、2018年の抱負を教えてください。

平尾)オフィス移転から始まった2017年。おかげさまで、10期連続増収増益という節目を迎えることができました。また2018年になってから発表したものも含みますが、上場以来10件のM&Aを行い、事業拡張も順調に進んでいます。水嶋さんにもご協力いただいている「ミノリノ」も含めた新規事業の立ち上げ、IFRS(国際会計基準)の導入をはじめとした管理体制の整備など、東証一部鞍替えも見据え、より社会に対して大きな責任と影響力を持つ会社に成長していくための楔を打てたことも大きな一歩でしたね。

2018年の抱負としては先ほどのお話にもありましたが、身近な人や社会に対してどういった貢献ができるか、会社として経営者個人として、引き続き考えながら前に進んでいきたいと思っています。

水嶋)2017年はじげんさんのオフィス移転プロジェクトも含めて、1年を通してみるとプロデューサーとして「0→1」を創り上げる仕事が多く、一方で2018年につながる種まきもたくさん行えました。これからはその「1」となった芽を育てていくためにどうクリエイティビティを発揮するか、心地よいプレッシャーとともに取り組んでいきたいと思っています。

平尾)じげんとしても、個人的にも2018年もよろしくお願いしますね。

水嶋)こちらこそよろしくお願いします。引き続き色々と学ばせて下さい(笑)。


取材・文:田中 雅大(ペロンパワークス)/撮影:MEGUMI(DOUBLE ONE)/スタイリスト:徳永 貴士
衣装:銀座もとじ 男のきもの 〒104-0061東京都中央区銀座3-8-15
TEL:03-5524-7472 FAX:03-5524-7473
http://www.motoji.co.jp/otokonokimono/


 

じげんオフィスでは本対談で目入れをした達磨を展示しています。ご来訪の際はぜひご覧ください。

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